◇ 造り手としての職人気質

職人さんたちの技術力の低下が深刻です。それが起因して起こる、諸々の悪い現象を危惧せざるを得ません。少し原因を探ってみましょう。

次のようなことが考えられます。

  1. 高度経済成長を遂げた後の高コストな社会構造になってしまった。
  2. 質よりも量の時代に突入した。
  3. 工法の合理化や新建材の普及で、熟練した技能を持たなくても施工が可能となった。
  4. 技術力に対する賞賛・評価よりも、経済力に対する価値を追い求める社会構造。
  5. 充分に技能が育成される時間を確保する事が困難な現状である。
  6. 均一化された教育が永年続いている。

その結果、

  1. プロ意識の欠如とか職人気質、誇りが不足している。
  2. 昔ながらに伝え続けて来た匠の技の継承や、それを支える職人の育成がなされなくなった。
  3. 職人の技術力の低下が顕著になってきた。
  4. 満足に仕事をこなせない職人が多くなった。
  5. その結果手抜き工事、欠陥住宅となって現れた。
  6. 考えられないような施工ミスをしている事例が多発している。
  7. スピードと利益優先の商業主義で塗り固められた会社が圧倒的に多い。
  8. 腕のいい職人になりたいという願望が無くなってきた。

最近、個性を求めたフリープランの住宅や、日本本来の在来木造住宅の良さが見直されるようになってきました。そうなると施工する建設会社や工務店に、それをこなすだけの技能や技術がどうしても必要になってきます。ところが残念なことですが、その人材が不足してしまっているので、満足に仕事をこなせなかったりする訳です。

結果として手抜き工事とか欠陥住宅を作り出してしまう土壌を生み出しているのです。本当に考えられないような、施工ミスをしている事例が散見されますが、悪意が有って手抜きしたり欠陥住宅を作っている訳ではないことも事実です。悪意は持ってはいないけれども、技術や技能の不足が起因して否応なく欠陥を作り出してしまっている、と言った方が良いのかもしれません。それだけに技術や技能の不足による欠陥は最も深刻な事態だと言わざるを得ません。

決定的な構造の欠陥は殆どの場合が、技能や技術不足の職人の施工したものを、工務店などの施工管理者が技術不足のために、正しい施工方法を知らなかったり、見落としたりてしまう事から起っていることが多いようです。どんなに技術や技能が身に付いていたとしても、この程度でいいだろう!とか、これくらいは、ま、いいか!などというような、簡単に妥協をする癖が付いてしまっていることもあります。とても悲しく怖いことです。技術者としてのモラルや誇りはどこへ行ってしまったのでしょうか。

「当社は自然の素材である木材を使い、匠の技を駆使して家を建築しています!」
なんて、もし宣伝するとか言い切れるのなら、少なくとも「造り手としての職人気質」を持っているべきだと思いますが、間違っているでしょうか。

一方では、家づくりはその工法や施工方法は時代とともに変化していくかも知れませんが、家づくりそのものが無くなることはありえない話ですので、家づくりに携わる職人さんたちの存在の意義や価値、そして技術力の向上に向けての社会的な仕組み、あるいは制度といったようなものについて、今こそ国を上げて真剣に取り上げ、議論しないといけない時期に来ているのではないかとも思います。

そして地域社会の中で、匠の技を持つ職人を地域社会そのものが認めて育てていく事が、後々地域の発展に繋がる大きな原動力になるのだという事に気付かなければならないと思います。

伝統文化の家づくりとまでは言わなくても、少なくとも、大金を払ってまで「家」という夢を実現しようと一生懸命に働いている方々に対し、技術や技能不足からくる手抜き工事とか欠陥住宅を与えてしまわない為にも、技能や技術の伝統を、若い世代に正しく教え伝えて行くことはもちろんのことですが、職人として自分の仕事に責任と誇りを持つ、プロとしての「職人気質」そのものを伝えていかなければならないのではないかと痛切に思います。

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