◇ 欠陥住宅から学ぶ

目を覆いたくなるような、とてもひどい実際に起こった悲劇物語をご披露します。
この出来事に遭遇して、私は言いようのないショックを受けてしまいました。実は、このことがきっかけで、このようなサイトを立ち上げたという次第です。どういう事なのかについては、まず、以下をご覧いただいてから申し上げたいと思います。

◆ 係争中の住まい

奥様の涙とパチンコ玉

依頼真夏のことでした。
私の知り合いの設計事務所の所長から、
応援依頼の話が飛び込んできました。
その設計事務所は、ある弁護士からの依頼で、紛争中の建物の調査をしていました。調査が進むにつれて、建物のこの部分は、本来どうあるべきなのか等の判断に苦しみ、私に応援を求めてきた訳です。

私は、早速その所長の案内で現場に赴きました。木造の平屋建てで瓦葺の家でした。あらかじめ手渡された資料に目を通していましたから、ことの重大さは直感で分かりました。

玄関からダイニングテーブルの椅子に案内されて、施主の奥様を紹介されました。まもなく先の弁護士先生も到着して、この件のあらましが語られ始めました。その時の奥様の様子は未だに忘れられません。

悲しみかれこれ20代後半と思われる息子さんを傍らにして、
目に一杯涙して感情を押し殺しながら語る様子は、目にもかわいそうで、その場にいることの辛さを感じました。
一通り話をお聞きした後、私は思うことがあって、その息子さんにパチンコ玉とか、何かボールみたいなものはありませんかと尋ねたら、その息子さんの目が一瞬光り、ニコッとしてポケットからパチンコ玉を出しました。

3個のパチンコ玉
彼の手のひらには3個のパチンコ玉が見えました。
恐らくこの息子さんは、これから私のやろうとすることを、もう既に自ら経験していたと思われます。きっと我が意を得たりの心境だったに違いありません。
私は、その3個のパチンコ玉を息子さんから受け取りました。パチンコは若いころは時々していましたが、今はここ十数年したことがありませんので、手にしたパチンコ玉の重さを久々に味わいました。こんな話はどうでもいいことですね。

私は、3個のパチンコ玉を、ダイニングキッチンの床にそっと置きました。

床として貼られたカラーフロアは、一見平らなようでしたが、パチンコ玉はその考えを否定してしまいました。なんと動いてはいけないはずのパチンコ玉が、無常にもコロコロと転がり始めたのです。
1個はテーブルの足に当たって止り、他の2個は部屋の隅まで転がって行き静止しました。

私は、思わず奥様と息子さんの目を見てしまいました。ほんの一瞬でしたが、廻りに妙な沈黙が走りました。そして、傍らの所長と弁護士に目で、この事件の重大さを伝えました。

◆ 現地調査

汗真夏の調査は酷ですね。
床下にもぐり、小屋裏に上っての調査は、
猛烈な暑さで、
体中から容赦なく汗が滴り落ちて、
下着までビチャビチャに濡れる状態で、
それはもう大変な作業でした。

結論からいいますと、この家は、よくもまあここまで造ったりも造ったものだと、絶句するほどのボロ施工の集合体でした。

次のページで、そのボロ施工カ所の驚きの実態のほんの一部をご披露します。

施工業者の言い訳や施工の正当性

施工を請負った業者は、知り合いに紹介された工務店ということでしたが、請負契約書もなければ、図面も1/100の手書きの平面図一枚。あぁ~ これで家が建つ?

裁判官後日、設計事務所の所長から、弁護士を通して裁判所に提出された現地調査の結果の資料に基づき、請負った工務店の社長と弁護士、裁判官を交えて調査結果の確認が現場で行われました。

私も所長と弁護士からの要請もあり、オブザーバーとして立ち会ったのですが、資料に基づき、一つ一つチェックされるに及び、請負業者側の弁護士が連れてきた建築士ですら、あきれて物が言えないといった感じで、最後には工務店の社長にこんなことを叫びました。
「こんなことも知らないで良く仕事してきたな」
本来、工務店側の弁護士の要請で立ち会っている訳ですから、工務店を擁護する立場な筈なのですが、現場が彼の良心を保ってくれたのだろうと思います。
現場監督
つまり、擁護するに値しないというか、
擁護するには、自分の技術屋としての良心に嘘をつくことになり、
いくらなんでもそこまでは出来ない。というところでしょうか。

私は、その工務店の社長の言い訳や施工の正当性を聞くにつけ、言葉は悪いですが反吐が出そうな感じでした。裁判官も、
「あなたは黙っていなさい。」
「今日は調査結果の確認のために来たのであって、言い訳や施工の正当性は裁判所で言いなさい」
と、まあこんな具合です。

この現地調査によって、正しい施工法から逸脱している施工カ所には付箋が貼られていきましたが、その付箋をつけられた不良個所は、実に100カ所を越える驚くべき数になりました。信じられない数ですね。

その後何回となく協議が行われたようです。設計事務所の所長から聞いた話ですが、結果的にどうなったかと言いますと、工務店側の全面敗訴に終わり、再工事つまり建て替えるという結論に達したようです。当然といえば当然の結末だったと言えます。

これまでお読みになってどう思われましたか?こんな事例なんて特例中の特例だろう?あり得ない話だよと一笑に付されますか?ところがさにあらずですから驚きです。このような事例は、あなたの身の回りで、いつでもどこでも起こり得る話なのですよ。くれぐれもこんな家にならないように、気をつけたいものですね。
このような目に遭わない方法があります。このサイトでじっくり勉強してください。

ここで全ての欠陥ヶ所をご披露するには、あまりにも紙面を費やしてしまいますので、ほんの一部だけ写真でご説明してみたいと思います。次の惨状写真と正しい施工法をご覧ください。

◆ 欠陥ヶ所と正しい施工例

欠陥ヶ所を指摘しただけでは面白くないでしょうから、今後新築なさる方のために、該当ヶ所の考え方などを事例と対比させながら書いてみたいと思います。

<欠陥ヶ所(A)>
この写真を見てどう思いますか?ひどい仕事をしてると思わず目を覆いたくなりませんか?
ゴツゴツしたコンクリートの上に、申し訳なさそうに防湿フィルムを敷き、その上に束を立てています。これだと少しの振動で束がはずれ床が下がってくることは明白です。しかも束は防蟻処理もしてないようですし、廻りに散乱している木屑はシロアリの格好の餌になってしまいます。
束はただ立てれば良いということではなく、それなりのちゃんとした意味があることを知るべきです。

<Aの正しい施工法(参考)>
これは同じ束でも、鋼製束と呼ばれるもので、良く使われているものです。
高さの調節が自由に出来、耐久性に優れています。木束のようにシロアリに食われる心配もありません。
下のほうに、白いものが見えますが接着剤です。上のほうのビス穴にビスが打たれて固定されます。

<欠陥ヶ所(B)>
ちょいと見ではなんとも無いようですが・・・
まず土台の継手(土台と土台のジョイント部)が、基礎の上に乗っていませんね。これは致命的なミスです。
また写真では分かりにくいですが、床を支える大引きと、床束を緊結する金物(カスガイという)が、打たれていないところが数多くあり、まことに恐ろしい仕事がしてありました。恐らく、時間の経過とともに、床が下がり、床鳴りがしてくること必然です。

<Bの正しい施工法(参考)>
床束の施工精度によって床が下がったり、床鳴りがしたりしますので、いっそのこと床束そのものを無くする方法は無いものかと考えた末にあみ出した工法を紹介します。
左の写真はその方法で施工した床組の写真です。床を構成する部材を一回り太くして、床の荷重に安定的に耐えられるようにしてあります。この方法の良いところは、床下に余計(束など)なものが一切無く、施工が早いというところです。
欠点は基礎工事にかかる費用がややかさんでしまうことですが、床が下がったり、床鳴りがしたりするのを防げるほうに、価値を見出したほうがいいかなと思います。
但し、この方法を採用するには、それなりの構造的(力学的)な知識が無ければなりませんので注意が必要です。

<欠陥ヶ所(C)>
この施工業者はアンカーボルトの施工に無知だったとしかいいようがありません。ただアンカーボルトを基礎の中に入れればいいというものではありません。アンカーボルトの埋め込み深さやねじ山の寸法など、基本的な考えや理解力が欠落しますとこのような仕事になってしまうんですね。いざ土台をアンカーボルトで締め付けようとしても、締め付けが出来ない、座金を2枚も3枚も重ねてもこの写真のような状態です。こんなことは素人の方でも分かりますよね。あぁ~ 開いた口がふさがりません。

<Cの正しい施工法(参考)>
基礎と土台を緊結するアンカーボルトの役割の重要性は論を待たないでしょう。アンカーボルトの基礎への定着寸法(埋め込み長さ)や埋め込み位置など、極めて重要な部分ですので、高い施工精度が要求されます。
左の写真では、土台の下に基礎パッキンといわれるものが施工してありますが、これは、土台と基礎の間に空間を設け、換気を良くすると同時に、シロアリなどの害を防ぐために開発されたものです。基礎パッキンは長さ910mmも開発されました。

<欠陥ヶ所(D)>
柱と桁・梁の接合部分は、継手方法、金物の緊結方法、位置など構造上極めて重要な部分です。

写真では、柱と桁材が十分に緊結されていません。大工による刻み(手加工)の技術レベルも低く、これだと、少しの振動でも建物が傾いてしまう心配があります。

<Dの正しい施工法(参考)>
工場であらかじめ加工された(プレカット)部材の精度は、手加工よりもかなり高く、一度組み立ててしまいますとなかなか取り外すことが出来ません。ですから、その分強度も増し、また木屑などに残材が出ませんので、最近ではほとんどの現場で採用されています。
取り付く筋違などの金物、羽子板など、所定のヶ所に決められた施工方法で、きっちり施工することが望まれます。

<欠陥ヶ所(E)>
小屋の桁が下がっていました。どの程度下がっているかを調査しています。赤い糸が水平レベルです。このレベルと桁天端との差が問題です。写真では手で分かりにくいですが、ここに柱があります。よく見て下さい。柱の上で桁が接合されています。柱の上での継手、接合の件は、いろいろ議論があるようですが、鉛直荷重や水平、垂直の振動などを考えますと、好ましい方法ではないと思っています。柱は、そのほかに下から突き上げる地震などの、振動を伝達する部材でもある事を忘れてはならないと思います。

<Eの正しい施工法(参考)>
横材の継手位置は、写真のような位置が良いとされています。柱の芯から150mm~300mm程度です。これは、応用力学上のちゃんとした根拠に基づいていますので、現在、大抵のプレカット工場での標準になっているようです。

その他、金物の取り付けなどは参考にして下さい。


何故引き起こされる欠陥施工

ほんの一部を紹介しましたが、この現場の惨状は筆舌に尽しがたく、まことにもって悲しい出来事です。施主側からしますと、夢のマイホームがこのような無残な形になり、さぞかし残念至極な思いでしょう。

一度建てられた構造物は、なかなか元には戻せないわけですので、なぜこういう結果になったのかの原因を含めて、建てる前に、家造りを依頼するときの心構えを、しっかり身につけておきたいものですね。この家の住宅ローンの支払いは始まったばかりです。この先どうなるのでしょうか?

木造の構造は、
こうでなくてはいけないという確固たる信念の基に、
一つ一つの部材の役割や力の伝達、
金物の緊結などなどをしっかり理解した上で、
きっちりとした施工をしない限り、
欠陥住宅は後を絶たないような気がしてなりません。
くれぐれも欠陥住宅をつかまされないように、気をつけたいものですね。

私はこの現実を突きつけられて、正直悩んでしましました。こんな事例で表立って問題になる事例は氷山の一角であること、つまり、表に出てこない欠陥住宅の事例が相当数あること、しかも対策を取らず、泣き寝入りしている人が多いことを知るにつれ、それを掴まされた建て主の気持を考えた時に、何とも言えない悲痛な気持ちになりました。
そして、この現実から逃げてはいけない。何とかしなければという思いが、日増しに強くなってきました。しかし所詮一人の力ではどうにもならないと思い、せめてもの方法として、ネットを活用しようという思いに立ち至ったのです。これが私の言うサイトの立ち上げ動機です。少しでもお役に立てればという必死の思いで……。

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